[発行]アカデミー出版(2000年10月1日)
下院議員のレークはある日、大統領選への立候補を打診される。何の汚点もないと思われていたレークだったが、彼には誰も知らないスキャンダルがあった。そのスキャンダルに関わる詐欺グループとの関係は何か!
■あらすじ
刑務所に服役している元判事の三人組(スパイサー、ヤーバー、ビーチ)は、囚人たちのトラブルを仲裁することを目的に開かれており一定の成果を上げていたが、その裏で弁護士を通じて詐欺行為を繰り返し、出所後の資金を溜め込んでいた。一方、下院議員のレークはCIA長官のメイナードからロシアの元将軍・チェンコフがクーデターを企ていることを聞かされ。このまま軍事費が削減されればアメリカは勝てなくなる事、更にその対策としてレークに大統領選に出馬してほしいとの依頼を受け、準備を進めていく。服役中の3人は弁護士のトレバーの協力の元、相手の弱みに漬け込んだ詐欺を獄中から行っていたが、10万ドルを騙し取る事に成功する。これをキッカケに、協力者のトレバーとの関係が怪しくなる。レークはCIAのバックアップを受け、後発の立候補にも関わらず豊富な資金と、議員買収や軍事関連企業の支援により着実に支持を集めて行いた。そんな時、カイロのアメリカ大使館がテロリストによって爆破される。この事件によって、ますますレークの支持が広がる事となる。久し振りに自宅に戻ったレークはシークレットサービスの目を振り切り郵便物を取りに行く。不審に思ったCIAが調査すると服役中の3人組とやり取りしていたことが判明する。レークの選挙戦の顛末は如何に・・・
■感想
本作は無名の下院議員だったレークが大統領選をどう戦うのか、そこに突如判明した服役中の詐欺グループの三人組との関わりが描かれている。三人組は元判事だけあって、人の弱みに漬け込んだ詐欺の手口が面白い。言葉巧みに近づき、”ここだ”という時には金銭を要求する。騙される方も様々な事情を抱えており、そのやりとりが読者の興味を引きつける。一方のレークも三人組と文通しているのだが、本作(上巻)では、他の被害者とは違い、紳士を貫いているが、これが本性なのか、あるいは下心かあるのかは描かれていない。その部分は続編(下巻)に期待したい。三人組と被害者を繋ぐトレバー弁護士の存在も本作を引き立てている。弁護士でありながら、自身の利益のために法を犯す行動は共感できないが、人間味溢れる部分もあり、時にはどっちの味方なのかわからないほど間抜けである。
本作は、大統領候補のレークと詐欺グループの三人組を中心にストーリーが展開するが、本当の主人公はCIA長官のメイナードだろう。資金集めや情報収集によりレークの選挙戦を取り仕切り、時にはテロなどの情報を知っていながら、選挙を有利に進めるためなら大きな犠牲を払っても見過ごすなどの行動に出る。まさに”裏稼業”である。レークも大統領となった場合でもメオナードの存在は無視できないことを察している。そういう展開だからこそ、しっくりこない点としては、なぜレークが三人組と文通していたことに気づかなかったのだろうという点である。これだけ情報把握を入念にするのであれば絶対に知り得ることなのだが、結果として、CIAが三人組に翻弄されることになり、抜群の面白さの一つとなっている。
大統領選という世界が注目するイベントを舞台に詐欺グループの犯罪という、スケール的には大きく異なる内容をうまく融合しながら、読者を飽きさせない展開となっており、すぐに読了してしまった。上巻ではそれぞれのストーリが独立しており、感覚としては未消化となってしまうが、それだけ下巻への期待が高まってしまう。是非、上下巻揃えて見てほしい。
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