[発行]宝島社(2016年8月18日)
小学生の時、母親が出て行ってしまった明は、母親と暮らしたマンションを訪れる。そこで、娘を愛する地縛霊と出会い、娘との再会を頼まれる。
■あらすじ
地縛霊の舘川小梅は暮らしたマンションから離れることができないため、20年前に別れた娘を見てきて欲しいと明に頼む。明は自分の境遇と合間って二人を合わせるよう奔走する。小梅が娘と別れるには大きな理由があった。そして娘の結婚式の日に奇跡が起こる。
明は義妹の友人である鈴置杏奈と同じハンバーガー店でアルバイトを始める。ある日、杏奈の兄の元カノである寧子が来店するが、寧子に生霊が取り憑いていた。しかも、その生霊は幼少時代の杏奈であった。兄と寧子の幸せを願っていた杏奈だったが、なぜ杏奈の生霊が寧子に取り憑いているのか。何をしようとしているのか。杏奈自身の心の闇が解き明かされる。
お盆の期間に明は友人の井倉と柚子・杏奈で海に遊びに行った。そこで三森こずえの幽霊に会う。こずえは成仏しているのだが、お盆に帰ってきたと言うが家族からは何も思ってくれていないと言う。明はそんなこずえを寂しくないようにあの世へ送るよう助ける。そんな時、柚子が海に溺れてしまうが、それを助けたのはお盆で帰ってきた桃香だった。
■感想
幽霊が見えるようになった明は、様々な幽霊の願いを叶えていくストーリーは前作と同様だが、地縛霊や生霊など幽霊の設定を変えながら明の奔走を描いている。特に引き込まれたのは、生霊の設定では過去の嫌な自分と向き合うことになるシーンである。もしタイムマシンで過去に戻れるなら、その時の自分に言ってやりたいことは誰しもあるだろう。過去のどうにもできなかった自分を成長した自分が説得していくストーリーは、自分同士だからこそ納得感や説得力がある。明は強がっているが、深い部分で気遣いや思いやりのある人物像が伝わってくる。そうだからこそ、幽霊が見えるようになったのだろう。幽霊と言う特殊な設定であるがゆえに、”死”ということが幽霊にはないが、現実の世界で生きる明にとっては、この世には実在しないし、また、いつ会えるかわからない。でも、幽霊でも会いたいと言う葛藤が「さよならを君に言わない」というタイトルに込めらていると思う。
本書は「2」なので、前作の続編なのだが、幼馴染の桃香も登場するので、ぜひ前作から読んで欲しい。また、柚子との関係は明の鈍さにより相変わらずだが、次回作があれば最も気になる所なので期待したい。
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