[発行]宝島社(2015年8月6日)
高校生の須玉明は交通事故をキッカケに、幽霊が見えるようになる。そんな時、6年前に交通事故で亡くなった初恋の芹沢桃香と再開する。そして二人は昔の約束を果たす。明は幽霊の代弁者として後悔や無念を解きほぐしてゆく。
■あらすじ
小学生のある日、桃香は明を河川敷で会う約束をする。しかし、その約束を果たせぬまま桃香は交通事故にあってしまう。6年の歳月が過ぎ、交通事故がキッカケで幽霊が見えるようになった明は桃香と再開する。そして、あの日の約束を果たすのだった。
美術部の厚士と妙名はクリスマスをモチーフとした合作をしていたある日、妙名が事故で亡くなった。幽霊となった妙名は明に取り憑き、作品の続きに取り掛かる。ある日、その絵を見た厚士は妙名が書いていることを確信する。そして二人はクリスマスイヴに作品を完成させることができた。
女子高生連続通り魔殺人事件により4人の犠牲者が出ていた。その内の一人である川名水葡には親友の寺橋由佳里がいたが、死ぬ直前にお互いの勘違いから喧嘩してしまう。水葡は由佳里が次の犠牲者とならないように明に犯人探しを依頼する。水葡は明の力を借りて、由佳里への手紙を書き自分の本当の気持ちを伝えようとする。そんな時、水葡の墓参りに訪れた由佳里が通り魔に襲われてしまう。
リレーの選手だった野田実栗は白血病で亡くなってしまう。君花、直美、沙織と一緒に頑張ってきたリレーだったが、生前、転入してきた一橋陽菜の発言により、一番遅かった実栗は選手を交代することになる。それは陽菜の嫉妬であった。実栗が亡くなりバラバラになった4人にリレーを続けさせるために明を通じて説得を試みる。そして国体予選会が始まった。
■感想
様々な理由で成仏できない女の子の幽霊と会話できる明が、その願いを叶えていくストーリーは非現実的なのだが、生きているような情景が浮かんでくる。幽霊が見えない他の登場人物に幽霊の存在を信じさせる場面や明に取り憑いてしまうところは、少々強引であるものの、読み手に幽霊の気持ちを伝えて欲しいと感じさせている。
私は霊というものを信じてはいないのだが、亡くなった人にもう一度会いたいという気持ちは誰しもあるだろう。どんな形であれ、姿が見えなくても自分の思いが死者に伝えられるのなら、信じてみたいと感じさせる作品である。
前作の「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」も時間が逆行するという非現実的なストーリーで、とても感動し期待して本作を読み進めたのだが、前作と比較すると見劣りしてしまうのが残念である。幽霊という実在しない人物とのやり取りが直接的ではないことが、そう思わせるのかもしれない。例えば生き返るとかあの世で再開するなどの展開の方も面白いかなと思う。
とはいえ、一番のイライラポイントは、主人公(明)が義理の妹の気持ちに気づかない鈍感さだろう。(おそらく読者の皆さんが思っている)幽霊の気持ちはわかるのに、なぜ一緒にいる時間の長い妹の気持ちがわからないのか。態度を見ればすぐに気づくと思うのだが・・・この2人の今後の展開が最も興味がある作品であった。
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