本のある生活~良書との出会い~: 「書評」マスカレード・イブ/東野圭吾

2021年2月21日日曜日

「書評」マスカレード・イブ/東野圭吾

 マスカレード・イブ

[著書]マスカレード・イブ
[著者]東野圭吾

[発行]集英社(2014年8月21日)

オープンしたばかりのホテル・コルテシア大阪が舞台となる。本作は主人公である新田浩介と山岸尚美が出会う前のストーリーである。一つの事件をキッカケに、二人の推理が事件を解決してゆくのであった。

▪️あらすじ

山岸尚美がフロント業務をしていたとき、宿泊客に過去の彼が来る。芸能事務所に務める宮原隆司は自分のことより相手を最優先に考えるタイプで、再会したときも変わらず優しい男だった。その優しさ故に、周りに利用され振り回され、上司をかばう為に自分が犠牲になることも辞さないと考えていた。そういったウソも尚美は鋭い観察力で見抜き、それぞれが納得してホテルを後にする。

一方、新入り刑事の新田浩介は、深夜にランニングしていた男性が刺殺されたとの連絡を受け捜査を開始する。被害者の身辺は問題がなく殺される手がかりは見当たらないが、現場の状況から推理し、被害者の妻の料理教室に通う生徒が犯人であることを突き止める。しかし犯人は犯行を認めているものの、何か腑におちない。そこにはもう一人の仮面を被った人物が存在した。

三連休のある日、27歳女性ということ以外非公表の覆面作家「タチバナサクラ」が執筆活動でホテルを利用する。通常の宿泊客として”男性が”チェックインするが、一目会いたいファンが本人を探そうとする。その状況を察知した尚美は出版社の担当者から部屋がバレないように協力を依頼される。一方、タチバナサクラは執筆活動に専念している”はず”なのだが・・・尚美だけが、それぞれの仮面の下を知っているのであった。

東京のある大学で半導体の研究をしていた岡島教授が研究室で殺害された。新田は生活安全課の穂積理沙と組み捜査を開始する。そんな中、同じ研究を行っていた南原准教授が捜査線上に浮上する。その南原が泊まっていたのが、オープンしたばかりのホテル・コルテシア大阪だった。一方の尚美は、応援兼教育係としてホテル・コルテシア大阪に赴任していた。そこに穂積がやってくるが、尚美の推理もあり、第二の容疑者である畑山玲子が浮上する。南原と畑山の関係はなんなのか。誰が犯人なのか。


▪️感想

前半は主人公である新田浩介と山岸尚美の推理力・洞察力が描かれている。そんな二人はこのストーリーで直接の接点はない。事件を通して(穂積理沙を通して?)つながり合うのだが、尚美は宿泊客の”人”に注目し、その行動から謎を解き明かすのに対し、新田は”事実と閃き”から仮説を立てる。どちらも職業柄で物事を捉えているが、視点は違えど感じた違和感やギャップから事件解決につながっている。二人の視点は少し行き過ぎた部分も否めないが、複数の事件が絡み合うストーリー展開が面白い作品である。

登場人物で異彩を放つのが、新田と組んだ穂積理沙である。警察官とは思えない”一般的な”発想で周囲の刑事を呆れさせるが、その純粋さと粘り強さに共感が持てる。穂積がいなければ尚美も心を開くことはなく事件も解決できないと想像すると、ある意味、本作の主人公なのではないだろうか。

後半では過去の事件との接点が展開するが、そのストーリー展開が早く、ほぼナレーションでの説明で終わっていることが残念である。二つの事件をもう少し詳細に描いても良かったのではないかと感じた。

本作はマスカレードシリーズの第2弾であるが、1作目のマスカレード・ホテルで新田浩介と山岸尚美が潜入捜査で協力する前の状況を描いている。本作での出来事を二人が知っていたら、潜入捜査でもお互いのイメージや接し方も変わったかもしれない。ストーリー以外の部分でも楽しめる作品である。

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