[書籍]7つの習慣(成功には原則があった)
[著者]スティーブン・R・コヴィー
[発行]キング・ベアー出版(1996年12月25日)
全世界でベストセラーになった本書は、ビジネスだけでなく自分自身を見つめなおすきっかけを作ってくれる一冊だった。まず自分が変わることで、豊かな人生を送ることができる。その手法を学ぶことができる一冊である。
私はこの本を知っていたわけではない。誰かに紹介されたわけでもない。いろんな本を読む中で、度々、本書の名前が出てくるので気になっていたのは事実であるが、積極的に買おうと思ってはいなかった。そんな時、たまたま本書を見つけたわけである。当初はビジネス書だと思っていたのだが、読み進むにつれ「人生の指南書」に思えてならない。何かしら心に響くことだろう。
■パラダイムと原則について
人は感情の生き物である。そしてわがままで他をコントロールしようとする。しかしそれでは人は動かないし動かせない。そのアプローチとして「個人主義」と「人格主義」が紹介されている。個人主義は表面的で一時的な対応であり、人格主義は物事の本質的な部分へのアプローチである。問題が起きたとき、テクニックだけでやり過ごすか、誠意をもって取り組むかということだ。
人間関係を改善させるためのテクニックを使ったとしても、それはすべて相手を操ろうとしている行動にしか見えない。信頼という土台がなければ、永続的に成功することはあり得ない。基礎となる人格の良さがあってはじめて、テクニックが生きるのだ。
物事の見方や捉え方を変えることで、見えなかったことが見えてくる。意見の違った人やそりが合わない人でも、見方を変えればわかり合えることもある。大事なことは「自らが変わる」ことなのだろう。それが”インサイド・アウト”(内から外へ)である。うまくいかないことを周りのせいにするのではなく、相手に飛び込むことで信頼が生まれ解決に向かうのである。しかし人は成長と共に保守的になり、新しいことに挑戦する意欲や努力がなくなるのも事実だ。自身も含め、柔軟な考えで素直に物事を受け止められるよう心掛けたい。
■私的成功
[第一の習慣]~主体性を発揮する~
人は生きていく中で後悔することもある。その時は信じた道でも、振り返ればもっと他の選択があったのではないかと思うことも多いだろう。しかし、いちいち後悔していては人生も面白くないし、これからの人生も後ろ向きになる。自分を主体として物事を考えれば責任をもって行動するし失敗から何かを学ぶことができる。
主体的になるということは押しつけがましくなることではなく、賢くなることなのだ。価値観に基づいて行動し、現実を正しく認識し、その中で他人の気持ちや周りの状況を理解することなのである。
自分の思いどおりにならないとき、他者に問題があると考えれば楽である。しかし、物事を思いどおりに進めたければ、自身が変わることが大事なのだ。自分一人で生きているのではなく、誰かと関わり合って生きている。いや「生かされている」と捉えることが大切なのだろう。そんなことを考えていると、童話「北風と太陽」を思い出した。人は「反発」では動かないが「同調」なら動いてくれるし、しかも何倍ものスピードになる。
[第二の習慣]~目的を持って始める~
私も社会人として、管理職として、リーダーシップやマネジメントという言葉を目にし使っている。しかしその意味を問われると漠然とはわかるものの、相手が納得する説明ができる自信はない。リーダーシップとマネジメントは同義、あるいは手法の違いと思っていたが、本書では次のように説明されている。
マネジメントは手段に集中しており、どうすれば目標を達成できるかという質問に答えようとするものである。一方、リーダーシップは望む結果を定義しており、何を達成したいのかという質問に答えようとするものである。
私の勉強不足・認識不足なだけだろうが、そういう考え・位置づけで捉えるのかと、目からウロコであった。どちらが欠けてもだめだが、その役割を担う者は、立場や組織の大きさで異なってくる。仕事でも家庭でもプライベートでも、それぞれの役割があり、また役割と違ったことをしてもうまくいかない。リーダーシップで目標・目的を定め、マネジメントで最良の道を進んでいくことが最も効果的なのだと感じた。時代の変化と共に指導・教育のあり方も大きく変化したと思う。昔はブルトーザーのように強引に引っ張っていくことが良いリーダーだったが、今はそれでは誰もついて来ない。誰もが納得する目的や意味を明確に示し、責任を持って行動することが人を引き付ける要である。
”目的を持つ”ことは大事だが、そのプロセスがさらに重要と本書にある。
人は他人の決めたことに対しては決意しない。「参加なければ決意なし」
会社には理念や社訓などが存在する。あるいは、様々なライフイベントで方向を決めることもある。そのプロセスに関わることで、目的意識が生まれ「自分事」として強く認識できるのである。人間関係が希薄になる世の中にあって、自己中心的な考え方になっていると感じる。プロセスに関わることができなくても、目的意識を浸透させることが重要だが、そのためには、まず自分が意識・行動しなければ結果はついてこない。
[第三の習慣]~重要事項を優先する~
ある目標(リーダーシップ)に向かって物事を進める(マネジメント)とき、優先順位をつける。行動には「緊急度」と「重要度」であり、この二つの視点にどれぐらい時間を使っているかが重要とある。本書でも指摘しているが、緊急で重要なことばかりに追われ、余裕がないことが多い。”緊急・重要なことなのだから当然だ”という意見が大半だと思うが、緊急ではないが重要なこと(例えば自己啓発や人間関係づくり)をいかにできるかがカギとなる。
大きな成果を出す人は、問題に集中しているのではなく、機会に集中している(ピーター・ドラッカー)
頑張る人には仕事が集まる。その人に頼めば解決してくれるし仕事も進むからである。頼まれた人もある意味それに快感を覚えていると私は思う。しかし、それは返って様々な機会を奪っているのだ。本人の時間、他者の成長など、総合的にみれば場当たり的で組織として継続性がない。できることとできないことの判断、重要事項への集中、緊急時への備えに力点をおく”自己管理”ができる人が優秀な人材なのだろう。これは私の経験からくる反省である。
時間は平等な資源であるが、無限ではない。より多くの仕事・成果を出すには有限である時間を最大限に使わなければならない。そのためには周囲の協力が必要だし、協力を得るには信頼がなければ誰もついてこない。
信頼は人間にとって究極の動機づけである
「協力してもらうには信頼が必要→信頼を得るには能力が必要→能力を上げるには教育が必要」だと思う。この流れが確立された組織・コミュニティーは強い。しかし、確立するには時間と根気が必要である。頭がいい人ほど自分で処理してしまいがちだが、それでは自分もパンクするし周囲も成長しない。”重要事項を優先する”とは、目先のことだけでなく、中長期的な視点で成功・成長を見ることなのだ。
■公的成功
[第四の習慣]~Win-Winを考える~
相手との関係においてWin-Winは最も望ましい結果である。これは勝ち負けの問題ではなく、その後も相手との関係がWin-Winでなければならない。その時は自分にメリットがあったとしても、相手は快く思っていなければ、中長期でみればデメリットとなる。
土台となる人格と信頼がなければ、合意は紙くずにすぎない。だから、Win-Winを求めるならば、それを可能にする感ん系を築くことに誠心誠意、取り組まなければならない。
人は他人の成功や成果に嫉妬し、時には足を引っ張ることもある。実際にそうしなくても、内心では妬んでいることもあるだろう。本書でも「成熟(勇気と思いやりのバランス)」「豊かさマインド(内的価値、自尊心)」といった人格形成の重要性が示されているが、成長と共に(環境面の影響は大きいが)形成された人格や性格を変えることは難しいと思う。しかし、自らの行動は変えることができる。私が考えるWin-Winを考えるとは、使い古された言葉だが、”相手の立場になって考える”ことだと思う。そうした行動をとり続ければ信頼を得ることができ、こちらの意見も聞き入れてもらえるようになる。決して相手の言いなりになることではなく、信頼関係があればお互いに満足できる結果につながるのだ。まずは、相手の話を聴くことから始めようと思う。
[第五の習慣]~理解してから理解される~
強制や指示ではなく、相手が心から動くようにするためには、信頼されなければならない。信頼の重要性についてはこれまでも述べて来たが、第五の習慣では信頼関係の構築、要は人間関係は相手を理解することが効果的なコミュニケーションの鍵とある。相手に影響を与えるには、考え方が理路整然としておりブレがなく、模範となる行動をとるなど、そういったことが自然にできている人が信頼される。相手のことを思って行動することは頭では分かっているし、行動もできるだろう。私はこの手法として”コーチング”のことではないか?と思った。コーチングでは相手の話を聴き行動を促すことであり、その手法も様々な書籍で紹介されている。本書で繰り返し言っているのは、こういった手法は効果的だが、表面だけの行動ではすぐに相手に見透かされてしまうし、逆効果であることを認識しておかなければならない。地位が高いほど、経験が長いほど、年齢が高いほど、立場が上位なほど、自分の経験や知識が正しいと感じてしまい、また相手にも求めてしまう。部下・後輩に上から目線で指示したり、買い物で店員に文句を言ったりしたことはないだろうか。必要な指示・クレームもあるが、一旦立ち止まって、違った目線で物事を考えられる余裕が持てるようにしたい。
[第六の習慣]~相乗効果を発揮する~
他者と意見の食い違いで対立した時、人は感情的になり相手に勝とうとか抑えつけようとする気持ちになる。第六の習慣では、これまでの習慣を駆使し、相乗効果を得ることで、難しい問題・課題を解決することにある。
素直に、自分の考え、気持ち、経験などを打ち明けるのに必要な勇気を示し、相手も自己表現ができるように助けることができるのだ。そして、相手の相違点を尊ぶことができる。誰かがあなたの意見を否定するとき、次のように言える。「よかった。あなたは違う意見を持っている」と。賛成する必要はないが、彼らを肯定することはできる。そして、理解するよう努めることができるのだ。
感情的になると周りが見えなくなる。当然、相手の意見など聴こえるはずもなく、受け入れることはできない。しかし、それは相手にとっても同じなのだ。冷静にお互いの意見を聴けば解決策は自ずと見えてくるものだろう。もちろん、妥協できないこともあるし、解決できない問題もあるだろう。大事なのは最初から否定するのではなく、お互いの意見を出した上で、双方が前向きに解決策を議論することである。議論の場では片方がそういう意識があっても、片方が感情的では話は進まない。議論の前にそういう雰囲気・風土づくりが重要だと感じた。私も「批判」は喜んで受けるが「非難」は感情論なので相手にしないように意識したい。
[第七の習慣]~刃を研ぐ~
これまでの習慣は自己実現のパラダイム(物事の捉え方)であるが、それを実行するのは自分自身である。第七の習慣では個人の能力を高めるための習慣が紹介されている。簡潔に言えば、「運動」「瞑想」「勉強」「コミュニケーション」といったところだろうか。これらをバランスよく継続的に実施することの重要性が示されている。
人生で唯一最大の結果を生み出す投資、つまり、自分自身に投資することだ。つまるところ、人生に立ち向かうために、そして貢献するために使える道具は、自分自身しかないのである。
若い頃の私は、自分のことには無頓着で、持ち物や食べ物を”消耗品”と考えており、必要最低限としていた。もちろん仕事は懸命に努力していたが、そのときの上司から「自分に投資しろ」と言われたことがある。仕事の要求も高く厳しい上司だったが、仕事はもちろん、新聞雑誌、美術品、イベント、持ち物など様々なことに触れるよう指導を受けた。時にはいろんな物をくれたりイベントに参加したこともある。当時はお金もなく必要性も感じていなかったが、振り返れば貴重な経験であり、様々な場面で力になっている。今の時代、そういうコミュニケーションは敬遠される傾向にあるが、お互いの信頼関係があればできるのである。
冒頭にも述べたが、本書はビジネスやプライベートなど生きていく上でのパラダイム(物事の捉え方)が記されている。この内容ができていない部分も多いが、自身の行動に照らして振り返る機会となった。世代や職業などに関わらず、一読してほしい良書である。
0 件のコメント:
コメントを投稿