本のある生活~良書との出会い~: 「書評」ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の原則/ジェームズ・C・コリンズ、ジェリー・I・ポラス

2020年11月6日金曜日

「書評」ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の原則/ジェームズ・C・コリンズ、ジェリー・I・ポラス

ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の原則

[書籍]ビジョナリーカンパニー(時代を超える生存の原則)

[著者]ジェームズ・C・コリンズ/ジェリー・I・ポラス

[発行]日経BP出版センター」(1995年9月29日)

この本はビジネス書としてはベストセラーであり、これまでの読者が本書の解説や要約を十分に行っているので本サイトでは割愛したい。ここでは本書の中から、強く印象を受けた言葉や考え方を中心に私なりの思いを紹介したい。

本書は長期間繁栄し続けている企業(1950年以前に設立)に注目し、沿革や危機をどう乗り越えたのか、経営者はどう動いたかを詳細に分析している。その中から、なぜ一流であり続けることができるのか、繁栄し続けるために大切なことは何かについてまとめたものである。

ビジネスでの教訓として4つの概念が示されている
①時を告げる予言者になるな。時計をつくる設計者になれ
②「ANDの才能」を重視しよう
③基本理念を維持し、進歩を促す
④一貫性を追求しよう

この中で最も強く印象が残ったのは「①時を告げる予言者になるな。時計をつくる設計者になれ」である。企業が繁栄し続けるためには、”優秀な経営者・社員”、”柔軟に対応できる組織・環境”だと改めて感じた。カリスマ的な指導者やヒット商品が生まれれば会社の業績は上がる。しかしそれは一時的であり、いつか飽きられ継続するものではない。そういう意味でも”時計をつくる設計者になる”ことは重要である。どんなに優秀でも一人で仕事ができるわけではない。人や組織との関わりの中で成長・発展するのである。わかりやすく言えば”自分主義ではダメ”ということであろうか。「俺が俺が!」とか「自分でなければできない」とか「自分がやったほうが早い」など、つい自分優先で物事を考えてしまいがちである。それが成功すれば自分の評価につながることも納得できる。しかし会社としてみれば継続した業績を上げる行動ができる人材こそ優秀である。本書でも具体的な例として、権限移譲や後継者の育成・教育、普遍的な理念の制定を挙げている。このような考え方は、何も本書が初めてではない。教育の世界では「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」は定番であるし、松下幸之助の「やってみなはれ」、山本五十六の「やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ」など、継続的な繁栄に向けた教育の重要性は言われてきた。要は『人』なのである。会社を動かすのも人、お客さまも人、過去も現在も未来も人が作るのである。ビジョナリーカンパニーとは「人が成長したいと思える環境・風土が整った会社」ではないだろうか。

話は本書と全く外れるが、私の好きな言葉は「井の中の蛙」である。所説あるが、この言葉の続きに「井の中の蛙 大海を知らず されど空の青さを知る」とある。誰もが最初は素人であり、経験を積むことで戦力になる。なんでもこなせるスーパーマンにはなれない。野球でホームランを何本も打つ選手がサッカーで活躍できるわけでもなく、エリート営業マンが大工の仕事はできない。餅は餅屋なのである。私自身も狭い世界でしか生きていないが、せめて”その世界の中だけは”自信を持てるよう努力し続けたいと思う。


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