[書籍]働く君に贈る25の言葉
[著者]佐々木常夫
[発行]WAVE出版(2010年11月13日)
私は著者(佐々木常夫氏)のファンである。その理由は二つある。一つは家族の環境が私と似ており親近感があること、もう一つは、特別な言葉ではないがその一言一言がその時の自分に重なるからである。本書は「社会人になった甥への手紙」という形で書かれており、読みやすくわかりやすい。20~30代の若者に向けた本であるが、いくつになっても繰り返し読みたくなる本である。
■第1章 自分を磨くために働く
誰しも子供の頃に思い描いた夢がある。あなたはその夢をかなえたであろうか。あるいは成りたかった職業や仕事をしているだろうか。私を含め、そこには大きなギャップがあるのではないだろうか。特に仕事に関しては人生において大きな要素である。本当に好きでやりたかったことができる人は幸せであるが、そこが問題なのではない。重要なのは”自分がどうしたいか”なのだと思う。本書では「目の前の仕事に真剣になりなさい」「欲を持ちなさい」「人生観を持ちなさい」とある。哲学的な部分もあるが、私なりに解釈すると「相手の立場を理解し、目的意識を持って行動し、懸命に努力し続ける」ということだと思う。ありふれた言葉であるが、実行するのは簡単ではない。本書の中で行動を促す(と私は理解している)言葉が”甥へのプレゼント”として紹介されている。それは「それでもなお」という言葉である。どんなに辛い事、納得いかないことがあっても”それでもなお”行動することで、成長し信頼され結果に結びつくのである。私自身も良いプレゼントをもらって感激である。
■第2章 成長角度を最大化する
著者の言う成長角度とは「”人生の到達点に向かう角度”であり、その角度は人の持つ志によって決まる」とされている。 志の高い人ほど最短距離で到達でき、志の低い人は高い人には追い付くことができない。 ”志”とは「ひたむきさ」「相手を尊重する」「一歩先の行動」「凡を極める」とある。 これを見て”急がば回れ”なのだなと感じた。 最大の結果を最短の時間で出すには、回り道でも努力し続けることが重要である。 当たり前のことかもしれないが、人は楽したい生き物であり、自分も含めなかなかできないのが実情ではないだろうか。 私は成長角度に加えて、到達するまでの距離や時間を縮めることもできるのではないかと思う。 せっかくの”志”も内に秘めていてはもったいない。 周りと共有し行動すれば、より高い品質や効果が得られると思う。 全てをオープンにする必要はないが、少なくとも同じ目標に向かっている仲間がいれば、相乗効果が生まれ自分の思い描いた以上の結果につながるだろう。 そういう仲間が仕事でもプライベートでも充実している人は、うらやましい限りである。
■仕事の要を知る
本書は初めて仕事をすることとなる若い人へメッセージとして構成されているため「メモの重要性」「時間を守る」「良い上司をマネする」など、仕事をする上での心構えやテクニックが紹介されている。 ある程度の会社経験がある方なら当たり前のことかもしれないが、改めて振り返ると反省点も多くあった。
”それなり”に仕事ができるようになると、目立った失敗が少なくなるがために、かえって自分の仕事ぶりを振り返らなくなってしまうものです。 ここに、大きな落とし穴があります。 成長が止まってしまうのです。
これを社会人生活が長くなると、色々な失敗を経験するものであるが、ある意味その失敗に慣れてしまい、単純に処理してしまうことがある。 これが著者の言う”成長が止まる”ことなのだろう。 更に悪いのはその対応・処理が後輩に浸透し、それが当たり前になることである。 失敗は誰もしたくないし、失敗した時は誰しも早く解決したいはずである。 しかし、成長がなければ同じ失敗を繰り返すことになる。 失敗してもやり方次第で、返って良い結果につながることもある。 一度立ち止まり、一人で抱え込まず、誠意をもって対応することを今一度認識することができた。 ピンチはチャンスである!
■どこまでも真摯であれ
会社生活では、社内外に関わらず多くの人と関わらなければならない。それは仕事ができるできない、性格がいい悪い、上下関係など多岐に亘るが、接し方や関わり方によって相手は敵にも見方にもなる。本書ではリーダーシップや上司との接し方(部下力)、素のままに生きるなどが紹介されているが、根底にあるのは「信頼されること」とある。全く同感である。私が思う”真摯であること”とは「”この人のためにやってやろう”と思われる人になること」だと思っている。それが信頼関係ではないだろうか。仕事は一人ではできない。逆に一人でできると思っている人ほど、周りは評価していない。相手を気遣い、思いやることで協力しよう・協力したいと思える関係がどれだけ築けるかが重要である。とはいえ、人は感情の生き物であり、好き嫌いも当然ある。しかし嫌いな人でも、こっちが嫌っているだけかもしれないし、どんな力・能力・人脈をもっているかもわからない。敵を作らないことは”自分の意思がなく八方美人だ”という人もいるだろう。言うべきところは言わなければならないし、私もそれが良い事だと言うつもりも毛頭ないが、どんなに能力が高い人でも一人ひとりの力は小さいものである。自分の思いを進めたいと思うなら、”この人のためにやってやろう”と自分も思われたいし、そう思える人と仕事ができれば幸せである。
■第5章 とことん自分を大切にしなさい
章のタイトルだけ見れば自己中心的な印象を受けるがそうではない。運命を受け入れ、人を愛すること。それが自分を大切にすることと記されている。仕事は人生において多くの時間を費やすが、それなら楽しいほうがよい。そうでなければ長続きしないだろうが、それでも仕事はしなければならない。よく「会社はダメだ」「制度がおかしい」などの愚痴をいったり、「○○することは決められている」など自分の権利ばかり主張する人がいる。自己主張するのは良いが、自ら環境を変える行動をとってこそ、その主張が生きてくる。自分勝手で発言するだけなら迷惑である。そういう人はその会社には合わないのだから、会社や本人のためにも、職を変えてみるのが良いと私は思う。少し脱線したが、要するに自分一人で生きているのではなく、活かされているのだ。
仕事に結果をもたらすのは、能力というよりも熱意です。そして、熱意を生み出すのは、一緒に働く人たちをの間の信頼関係であり、「その人たちのことが好きだ」という気持ちなのです。
本書では「信頼」という言葉が随所に出てくる。私も仕事はもとより、家族・会社・地域・コミュニティなど様々な状況で人と関わりながら生きている。いや、活かされている。そこでの潤滑油が”信頼”であり、信頼がなければ動きが止まってしまう。信頼関係の気づき方については割愛するが、私は相手に興味・関心を持つことが最も重要だと思う。好き嫌いもあるし、私も人付き合いは苦手であるが、まずは挨拶から始めようと思う。本書は初心に帰ることができ、人生の時々で何度でも読み返したい良書である。
0 件のコメント:
コメントを投稿